【今日のお話のポイント】
- 欠点だと思っていたことが、見方を変えると役に立つことがある
- 失敗を責めるより、どう生かせるかを考えることが知恵になる
- 人はみな、違うからこそ助け合える
むかしむかし、小高い丘のふもとに、小さな畑を持つおじいさんが住んでいました。おじいさんは毎朝、天びん棒の両端に二つのつぼを下げ、遠くの泉まで水を汲みに行くのが日課でした。
一つは、ぴかぴかで立派なつぼ。もう一つは、横に小さなひびが入った古いつぼでした。立派なつぼはいつも胸を張っていました。
「わたしは一滴もこぼさない。役に立つ、りっぱなつぼだ」
ひびの入ったつぼは、しょんぼりしていました。
「ぼくは、帰るころには半分くらい水がなくなってしまう。きっと、おじいさんの役に立てていない」
たしかに、泉から畑までの長い道のりを歩くあいだに、ひびの入ったつぼからは少しずつ水がこぼれていました。道にはしずくのあとが続き、日にあたるときらきら光りました。
ある日、ひびのつぼはとうとう悲しくなって、おじいさんに言いました。
「ごめんなさい。ぼくのせいで、毎日せっかく汲んだ水が減ってしまいます。新しいつぼに替えた方がいいですよ」
おじいさんは足を止め、やさしく笑いました。
「そう思うなら、今日の帰り道をよく見てごらん」
ひびのつぼは、不思議に思いながら道を見ました。すると、自分が下がっている側の道ばかりに、小さな黄色や青の花がたくさん咲いていたのです。反対側の道には、ほとんど花がありませんでした。
「きれい……。でも、どうして?」
おじいさんは答えました。
「お前のひびを知っていたから、その側の道にだけ花の種をまいたんだよ。お前が毎日こぼす水のおかげで、花は大きく育ったんだ」
ひびのつぼは、びっくりして声も出ません。
おじいさんは続けました。
「わたしはその花を摘んで市場へ持っていき、少しのお金に替えている。家に飾ることもできるし、病気の人へ届けることもできる。お前は、自分が足りないと思っていたかもしれないけれど、別の役目を立派に果たしていたんだよ」
その話を聞いて、立派なつぼは少し驚きました。自分は一滴もこぼさないことばかり誇っていましたが、道ばたに花を咲かせたことはありませんでした。
しばらくして、その村に暑い日が続き、畑の端の土が乾いてしまいました。おじいさんは考えました。そしてひびのつぼを畑の乾いた側へ、立派なつぼを野菜の根元へ使い分けるようにしたのです。
ひびのつぼから落ちる少しずつの水が、乾いた場所をやわらかくし、芽がしおれるのを防ぎました。立派なつぼは必要なところへしっかり水を届けました。二つのつぼは、それぞれ違う形で畑を助けたのです。
立派なつぼは、照れくさそうに言いました。
「どうやら、役に立つというのは、一つの形だけじゃないらしい」
ひびのつぼも、今度は胸を張って答えました。
「ぼくも、自分のひびをただ恥ずかしがるだけじゃだめだったんだね」
おじいさんはうれしそうに笑いました。
「欠けているところがあるからこそ、できることもある。大切なのは、ないものを嘆くより、あるものをどう生かすかだよ」
人にはそれぞれ、得意なことと苦手なことがあります。でも、違いがあるからこそ助け合えます。失敗や欠点と思えることも、見方を変えれば、誰かを助ける力になるのかもしれません。



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