夜だけ開く門 〜見張り番の兄弟と小さなランプ〜

夜だけ開く門 〜見張り番の兄弟と小さなランプ〜 未分類
夜だけ開く門 〜見張り番の兄弟と小さなランプ〜

【今日のお話のポイント】

  • 大きな力より、小さな用意がみんなを助けることがある
  • 毎日の地味な役目を丁寧に続けることは、とても大切な知恵
  • 困る前に備える人は、自分だけでなく周りも守ることができる

むかしむかし、高い城壁に囲まれた町に、夜になると閉じる大きな門がありました。その門は分厚い木と鉄でできていて、とても頑丈でした。門番の仕事は重く、人々はみな「門を守る者は力持ちでなければならない」と思っていました。

その門を見張る兄弟がいました。兄のエリヤブは大きな声と強い腕で有名でした。弟のナタンは細身で口数が少なく、目立たない子でした。

兄はよく言っていました。

「門を守るのに一番大事なのは力だ。もし泥棒が来ても、わしなら追い払える」

弟はそれに言い返さず、毎晩、門のちょうつがいに油を差し、鍵穴を掃除し、小さなランプの火を確かめていました。

兄は笑いました。

「そんなちまちました仕事、誰も見ていないぞ」

ある晩のことです。町に砂まじりの強い風が吹き始めました。空は真っ暗になり、人々は急いで家に戻りました。兄弟はいつものように門を閉めようとしましたが、その日に限って、重い門が途中でぴたりと止まってしまいました。

「おかしいぞ!」

兄は力いっぱい押しましたが、門はびくともしません。風はどんどん強くなり、砂が目に入って前も見えにくくなりました。もし門を閉められなければ、風で町の中まで砂が吹き込み、外の野犬や盗人も入りやすくなってしまいます。

兄は怒って叫びました。

「もっと押せ! 綱を引け!」

でも門は動きません。周りにいた大人たちも何人かで押しましたが、やはりだめでした。

そのとき弟のナタンが、静かに言いました。

「火を少し近くにください。門の下を見ます」

兄は言いました。

「今はそんな場合じゃない!」

けれども町長はうなずきました。

「やらせてみなさい」

ナタンはいつも持ち歩いていた小さなランプを取り出しました。風よけのついたそのランプは、強い風の中でも火が消えません。ナタンは地面すれすれにしゃがみ、門の下をのぞきこみました。

すると、砂と小石が吹きたまり、門の溝にぎっしり詰まっていたのです。しかも、何日か前に折れた木片まで挟まっていました。

「門そのものが重すぎるんじゃない。動く道がふさがっているんだ」

ナタンは棒で砂をかき出し、ちょうつがいにも油を差しました。みんなも一緒に溝を掃除すると、さっきまでびくともしなかった門が、ぎぎぎ、と音を立ててゆっくり閉まり始めました。

最後に大きな鍵がかかったとき、広場にいた人々は大きな拍手をしました。

兄は恥ずかしそうに弟を見ました。

「わしは押すことばかり考えていた。お前は、どうしてそんなランプを持っていたんだ?」

ナタンは少し笑いました。

「夜の門は暗いからです。それに、困ったときほど、小さなものが役立つことがあります」

町長は深くうなずきました。

「力は大事だ。だが、毎日の手入れと、小さな備えを忘れない知恵はもっと大事かもしれん」

その日から兄も、門を閉める前に油差しと掃除を欠かさなくなりました。町の人たちもまた、目立たない仕事をしてくれる人たちに、前よりずっと感謝するようになったそうです。

大きな問題は、大きな力だけで解決するとは限りません。ときには、小さなランプや、毎日続ける地味な手入れこそが、みんなを守る一番の助けになるのです。

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