・一度目の失敗は経験だが、二度目の同じ失敗は「考えが足りない」証拠
・甘い言葉や「都合のいい話」の裏側を見抜く力を持つ
・ピンチのときに、あっと驚く理屈で切り抜ける「知恵の鋭さ」
むかしむかし、ある深い森に、年老いたライオンの王様が住んでいました。王様は若い頃のような力がなくなり、自分で獲物を追いかけるのがすっかり大変になっていました。
お腹が空いてフラフラになったライオン王様は、森で一番ずる賢いキツネを呼び出しました。
「おい、キツネよ。私は病気で動けない。このままでは餓死してしまう。お前の知恵を使って、何かおいしい獲物をここまで連れてきてくれないか。特に、柔らかいロバの肉が食べたいものだ……」
キツネはニヤリと笑って答えました。
「お任せください、王様。私の口先一つで、ロバの方からここへ歩いてくるようにしてみせましょう」
キツネは森を抜け、一匹ののんびりしたロバを見つけました。キツネは親しげに話しかけました。
「やあ、ロバくん! おめでとう! 素晴らしいニュースがあるんだ。実はね、森の王様であるライオンが、引退する前に次の王様を誰にするか探しているんだよ。王様は『誠実で耳が大きくて、声の立派なロバくんこそが、次の王にふさわしい』と言って、お前さんを呼んでいるんだ。さあ、王宮へ行こう!」
ロバはすっかり舞い上がりました。
「えっ、僕が王様に!? それはすごい! さあ、今すぐ案内してくれ!」
ロバはキツネについていき、ライオンの住む洞窟へとやってきました。ところが、ロバが洞窟に入った瞬間、待ちきれなかったライオンが「ガオーッ!」と飛びかかりました。しかし、ライオンは年老いて体が鈍っていたので、ロバの耳の端を少しかじっただけで、逃げられてしまいました。
「ひえぇぇ〜っ! 王様になるどころか、食べられちゃうよ!」
ロバは死ぬ物狂いで森の奥へと逃げ帰っていきました。
ライオンはがっくりと肩を落としました。「ああ、私の失敗だ。もう二度とあのロバは戻ってこないだろう。今日の食事はあきらめるしかないな……」
しかし、キツネはあきらめていませんでした。
「いいえ、王様。あんなロバ、もう一度連れてきてみせますよ。今度は必ず仕留めてくださいね」
キツネは再び森へ戻り、震えているロバを見つけました。
「ロバくん、どうして逃げたりしたんだい! お祝いのダンスの途中でいなくなるなんて、失礼だよ!」
ロバは怒って叫びました。
「嘘をつくな! 王様はいきなり僕を噛もうとしたじゃないか! 僕は危うく死ぬところだったんだ!」
すると、キツネはケラケラと笑ってこう言いました。
「おやおや、ロバくん。あれは王様が君に『王の冠』を授けるための秘密の儀式だったんだよ。王様は君の耳をそっと噛んで、『これから私の知恵を君に授けるぞ』というサインを送ったんだ。それなのに逃げ出すなんて、もったいないなあ。王様は今、君が戻ってくるのを悲しそうに待っているよ」
ロバは首を傾げました。「……儀式? あれが王様の愛だったのかい?」
「そうだよ。さあ、今戻らないと、別の動物が王様になっちゃうよ?」
驚くべきことに、ロバはまたしてもキツネの言葉を信じてしまいました。
「そうか! よし、もう一度行ってくる!」
ロバが再び洞窟に入ると、今度はライオンがしっかりと待ち構えていました。ライオンはロバを仕留め、ようやくお腹いっぱい食べることができました。
さて、ライオンが食事を終えようとしたときのことです。王様は、キツネに言いました。
「キツネよ、よくやった。ご褒美に、このロバの『心臓』は、一番賢いお前にやろう。私はもうお腹がいっぱいだ」
実は、キツネはライオンが食べるのを待っている間、こっそりとロバの心臓を盗み食いしてしまっていたのです。でも、キツネは平然とした顔で答えました。
「王様、何をおっしゃるのですか。このロバには、最初から**『心臓』なんてありませんよ**」
ライオンは驚きました。
「なんだと? 生き物なら誰でも心臓があるはずだろう。どういうことだ?」
キツネは堂々と、とんちの効いた答えを返しました。
「いいですか、王様。もしこのロバに『心臓(心と知恵)』が少しでもあったなら、一度殺されそうになった場所に、二度ものこのこと戻ってくるはずがありません。一度騙され、二度目も同じ嘘に引っかかるなんて、そんな生き物は、最初から『心臓も知恵も持っていない』のと同じですよ」
ライオンは「なるほど……それもそうだな!」と納得して、そのまま寝てしまいました。
キツネは、自分のついた嘘で命を救い、おいしいお肉も手に入れて、満足そうに森の奥へ帰っていきました。
このお話は、私たちに「自分の経験をどう使うか」を教えてくれます。
人は誰でも失敗をします。一度目の失敗は、誰にでもある「間違い」です。でも、二度目も同じ失敗をするのは、キツネに言わせれば「心臓がない(考えていない)」ということになってしまいます。
周りの甘い言葉に流されず、一度起きたことをしっかり自分の知恵に変えていくこと。
同じ穴に二度落ちないように気をつけることが、厳しい森の中で、そしてこの世界で、賢く生き残るための秘訣なのですよ。
1) ロバが二度目も洞窟に行ったのは、どうしてだったかな?
2) キツネが「ロバには心臓がない」と言ったとき、本当はどんな意味がこもっていたと思う?
3) あなたがもし一度失敗したことを、もう一度誰かに「大丈夫だよ」と誘われたら、どうやって確かめる?



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