ライオン王様の「お口」の悩み 〜正直と嘘のあいだにある知恵〜

ライオン王様の「お口」の悩み 〜正直と嘘のあいだにある知恵〜 学びと対話
ご要望に合わせて、解説部分を削りつつ、物語の描写を豊かに広げて2000文字程度のボリュームに調整しました。 公開用スラッグ talmud-fable-lion-breath-diplomacy 第XX話:ライオン王様の「お口」の悩み 〜正直と嘘のあいだにある知恵〜
【今日のお話のポイント】
・「正直」がいつでも正解とは限らない。相手を傷つけない知恵を持とう
・「嘘」で自分を飾っても、いつか見破られてしまう
・ピンチのとき、争いを避けて自分を守る「賢い沈黙」や「ユーモア」の大切さ

むかしむかし、深い深い、緑の木々が生い茂る森の中に、黄金のたてがみを持つ立派なライオンの王様が住んでいました。王様は森の誰よりも強く、誰よりも大きな声で吠えることができ、すべての動物たちから恐れられ、尊敬されていました。

王様の住む洞窟のまわりには、いつもたくさんの家来や動物たちが集まっていました。王様はそんな自分に満足していましたが、一つだけ、困った癖がありました。それは、自分の力を誇示するために、時々動物たちに「逃げ場のない意地悪な質問」をして、彼らの反応を試して楽しむことでした。

ある夏の、じりじりと太陽が照りつける日のことです。王様は大きな岩の上で昼寝をしていましたが、ふと目を覚まして大きなあくびをしました。「ふわぁ〜あ……。むむ、なんだか自分の口の匂いが気になるな」。

王様は少しだけ不安になりました。しかし、自分は王様です。「自分の息は臭いのだろうか?」と弱気な顔をするわけにはいきません。そこで王様は、動物たちが自分に対してどれほど「正直」で、どれほど「忠実」なのかを試してやろうと考えたのです。

王様はまず、近くを通りかかった、毛がふわふわで真っ白なヒツジを呼び止めました。
「おい、ヒツジよ。ちょっとこちらへ来い」
ヒツジは震えながら王様の前に膝をつきました。王様は大きな口を「あーん」と開け、ヒツジの鼻先に「ハァーッ」と力いっぱい息を吹きかけました。

「正直に答えろ。私の息は臭いか? それとも、いい匂いか?」

ヒツジはとても正直な性格でした。王様の口からは、昨日食べたお肉の生臭い匂いや、何日も歯を磨いていないような強烈な匂いが漂ってきました。ヒツジは「王様が正直に言えとおっしゃったのだから、本当のことを言わなきゃ」と思い、ありのままを答えました。

「うっ……。王様、大変申し上げにくいのですが……。あなたの息は、まるでドブ川のように、とっても、とーっても臭いです!」

それを聞いたライオン王様は、顔を真っ赤にして怒りました。
「なんだと! 王である私に向かって『臭い』とは何事だ! お前には礼儀というものがないのか! 正直であれば何を言ってもいいと思っているのか!」
怒った王様は、正直すぎたヒツジを森の果てまで追い出してしまいました。

これを見ていた動物たちは、みんな震え上がりました。
「どうしよう。本当のことを言うと、王様は怒ってしまうんだ」

次に、ライオン王様は近くにいたイヌを呼びました。イヌはヒツジが追い出されるのを見ていたので、頭をフル回転させました。
(そうか、本当のことを言うからいけないんだ。王様は褒めてほしいに違いない)
イヌは尻尾をちぎれんばかりに振りながら、王様の前に進み出ました。

王様は再び、イヌの鼻先に「ハァーッ」と息を吹きかけました。
「さて、イヌよ。お前はどう思う? 私の息は臭いか、それともいい匂いか?」

イヌは顔を輝かせて、うっとりしたような声を上げました。
「王様、なんという素晴らしい香りでしょう! あなたの息は、まるで春の草原に咲くバラの花のように、うっとりするほど良い香りですよ! 私の鼻が溶けてしまいそうなくらい、ずっと嗅いでいたいくらいです!」

すると、ライオン王様は今度も顔を真っ赤にして怒りました。
「お前は嘘つきだ! 自分の口がそれほど良い匂いではないことくらい、私だって分かっている。そんな見え透いたお世辞を言って私をバカにするとは、許せん! お前のような嘘つきも、私の前からは消えてしまえ!」
ライオン王様は、わざとらしい嘘をついたイヌも追い払ってしまいました。

正直に言えば「失礼だ」と怒り、嘘をつけば「卑怯だ」と怒る。
森の動物たちは完全に困り果てました。「どう答えても怒られるじゃないか! いったいどうすればいいんだ?」と、みんな茂みの中に隠れてしまいました。

最後に、王様の鋭い目が一匹のキツネを捉えました。キツネは森で一番の知恵者といわれていました。
キツネは、ヒツジが「正直すぎて失敗したこと」も、イヌが「嘘をつきすぎて失敗したこと」も、じっと一部始終を見ていました。キツネはゆっくりと、落ち着いた足取りで王様の前にやってきました。

ライオン王様は、鋭い爪を岩に立てて研ぎながら、キツネを睨みつけました。そして三度目、大きな口を「あーん」と開けて、キツネの鼻先で「ハァーッ」と力いっぱい息を吐き出しました。

「さて、キツネよ。お前の番だ。逃げ場はないぞ。正直に、そして嘘偽りなく答えろ。私の息は、ドブのように臭いのか? それともバラのように良い香りか? どちらか選んで答えてみろ!」

王様の目は鋭く光り、もし間違った答えを言えば、今度こそ鋭い爪が飛んできそうな雰囲気でした。
キツネは、逃げ場のない質問に対して、あっと驚くような「機転」で答えました。

キツネはわざとらしく「コンコン、コンコン!」と大きな咳(せき)をしてみせると、鼻をズルズルとすすり、か細い、今にも消えそうな声でこう言ったのです。

「ああ、王様……。本当にお許しください。実は私、三日前からとてもひどい『風邪』を引いてしまいまして。今は鼻がすっかり詰まっていて、匂いが全く、一ミリも分からないのです。バラの香りも、ドブの匂いも、今の私にとっては存在しないのと同じなのです。ですから、王様のご質問に答えたくても、答えることができないのです。コンコン!」

これを聞いたライオン王様は、ポカンとしてしまいました。

「な、なんだ。風邪なのか。それなら仕方ないな。匂いが全く分からない者に、臭いかどうかなんて聞いても意味がない」

王様は拍子抜けしてしまい、怒りの矛先を失いました。キツネを怒る理由が見つからなかったからです。
「早く風邪を治せよ」
王様はそう言って、キツネを優しく見送ってくれました。キツネは王様の鋭い爪から逃れ、無事に森の奥へと帰っていきました。

本当のことを言って相手を傷つけるのでもなく、自分を偽って嘘をつくのでもない。キツネは、どちらの道も選ばずに、その場をまるく収める方法を見つけたのでした。

その夜、森の動物たちはキツネのまわりに集まりました。
「キツネさん、どうしてあんな答えを思いついたの?」
キツネは月を見上げながら、静かに言いました。
「言葉は、相手に届ける大切な贈り物。でも、時と場合によっては、何も渡さないことが一番の贈り物になることもあるんだよ。本当の知恵は、どちらかを選ぶことではなく、みんなが困らない『三番目の道』を見つけることなんだ」

それからの森では、動物たちは何か困ったことがあると、必ずキツネの知恵を借りにくるようになりました。そしてライオン王様も、無理な質問で家来を困らせることは少なくなったということです。

子どもへの問いかけ(いっしょに考えてみよう)
1) ヒツジさんとイヌさんは、どうしてライオン王様を怒らせてしまったのかな?
2) キツネさんが「風邪を引いた」と言ったとき、本当はどんな気持ちだったと思う?
3) あなたがもし、誰かに「答えにくいこと」を聞かれたら、どんなふうに答えたらみんながニコニコしていられるかな?

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