賢者ヒレルとせっかちな男

知恵と機転
【このお話から学べること】
何度邪魔をされても感情的にならず、相手を受け入れる「忍耐強さ」と「寛容な心」の大切さを説いています。怒りに任せて自分を見失うよりも、穏やかさを保つことの方が価値があるという教えです。

むかしむかし、ヒレルという、とても賢くて優しい先生がいました。

ある日のこと、二人の男が賭けをしていました。

「あの優しいヒレル先生を、怒らせることができるかどうか」という賭けです。

一人の男が言いました。

「もし僕がヒレルを怒らせたら、きみからお金をもらうよ。でも、もし僕が失敗したら、きみにお金をあげよう」

男は自信満々で、ヒレルの家へと向かいました。

その時はちょうど金曜日の午後で、ヒレルは安息日(お休みの日)の準備のために、頭を洗っている最中でした。

男は家の前で、わざと大声で叫びました。

「ヒレルはいるかー! ヒレルはどこだー!」

ヒレルはタオルで体をふくと、急いで出てきて言いました。

「やあ、どうしましたか? 何か困ったことでも?」

男はふてぶてしく質問しました。

「なんでバビロニア人の頭は、あんなに丸いんだ?」

とても失礼な質問ですが、ヒレルはニコニコして答えました。

「それはいい質問だね。彼らには、頭の形を整える産婆さんがいないからだよ」

男は一度帰りましたが、すぐにまた戻ってきて叫びました。

「ヒレルはいるかー! ヒレルはどこだー!」

ヒレルはまた、急いで出てきました。

「やあ、こんどはなんだい?」

「なんで砂漠に住む人たちの目は、あんなに細いんだ?」

「それもいい質問だね。砂が目に入らないようにするためだよ」

男はまた戻ってきて、三度目の叫び声をあげました。

「ヒレルはいるかー!」

ヒレルは嫌な顔ひとつせず、また出てきました。

「やあ、なにか用かい?」

男はわざと意地悪な質問をたくさんしましたが、ヒレルはずっと優しく答え続けました。

ついに男はイライラして、叫びました。

「ああ、もう! 世の中にあなたみたいな人が増えませんように!」

ヒレルは驚いて聞きました。

「おやおや、どうしてそんなことを言うんだい?」

男は悔しそうに言いました。

「あなたのせいで、私は賭けに負けて、大金を失ってしまったんですよ! どうやってもあなたが怒らないから!」

それを聞いたヒレルは、穏やかに笑って言いました。

「そうですか。でもね、私がイライラして怒るよりも、あなたが賭けに負けるほうがずっといいことなんですよ」

ヒレルは、どんな時でも「忍耐」すなわち我慢強くあることが、一番の賢さだと知っていたのです。

💭 いっしょにかんがえてみよう
さて、ここでみんなに質問だよ。もし君が忙しい時に、誰かが何度もつまらない用事で邪魔をしてきたら、どんな気持ちになるかな? ヒレル先生のように優しくできるかな?

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