ソロモン王と小さな蜂 〜小さな約束が起こした奇跡〜

ソロモン王と小さな蜂 〜小さな約束が起こした奇跡〜 正義と親切
ソロモン王と小さな蜂 〜小さな約束が起こした奇跡〜
【今日のお話のポイント】
・どんなに小さく力のない存在にも、必ず大切な役割がある
・本当の賢さとは、相手をバカにせず、誰からも学ぼうとする謙虚な心
・小さな親切が、いつか大きな助けとなって自分に返ってくる

むかしむかし、イスラエルの国に、ソロモンという名前のとても偉大な王様がいました。ソロモン王は、世界で一番の知恵を持っていると言われ、人間だけでなく、空を飛ぶ鳥や、森を走る獣(けもの)、さらには小さな虫たちの言葉まで理解することができました。

ある暑い夏の日の午後、ソロモン王は宮殿の美しい庭園で、木陰のベンチに座って昼寝をしていました。色とりどりの花が咲き乱れ、そよ風が吹き抜ける、とても穏やかな時間でした。

そこへ、一匹の小さな蜂が飛んできました。その蜂は、花の蜜を集めるのに夢中になっていて、うっかり王様の鼻の頭に止まってしまいました。蜂は驚いて、あわてて飛び立とうとした瞬間、チクリ!と王様の鼻を刺してしまったのです。

「痛いっ!」
ソロモン王は飛び起きました。鏡を見ると、自慢の鼻が真っ赤に腫れ上がっています。
「いったい誰だ! 私の大事な鼻を刺したのは!」

王様が怒鳴ると、一匹の小さな小さな蜂が、震えながら王様の前で羽を震わせました。
「お、王様、申し訳ございません。わざとではございません。あまりに花の香りが良かったので、うっかりお鼻を花びらと間違えてしまったのです……。どうか、どうかお許しください!」

王様は、鼻を押さえながら言いました。
「お前のような小さな虫が、この私を傷つけるとは。お前をどうしてくれようか」

すると、小さな蜂は一生懸命にこう言いました。
「偉大なるソロモン王よ。私はとても小さく、力のない虫です。でも、もし今日、私の命を助けてくださるなら、いつの日か、私があなたの力になることをお約束します。きっと、あなたをお助けしてみせます!」

ソロモン王は、その言葉を聞いて思わず吹き出してしまいました。
「ハッハッハ! 世界一の知恵と軍隊を持つこの私が、お前のような小さな蜂に助けてもらうだって? それは今年一番の面白い冗談だ。いいだろう、お前の勇気に免じて、今回は許してやろう。さあ、行きなさい」

王様は笑いながら、蜂を逃がしてあげました。蜂は何度も頭を下げて、空の彼方へ飛んでいきました。

それから数ヶ月が経ったある日のこと、ソロモン王の宮殿に、隣の国の「シバの女王」が訪ねてきました。女王はとても美しく、そしてソロモン王と同じくらい知恵のある女性でした。彼女はソロモン王の知恵が本物かどうかを試すために、たくさんの「難問」を持ってやってきたのです。

「ソロモン王よ。あなたの知恵が世界一だという噂が本当なら、この問題が解けるはずです」

女王は、大きなテーブルの上に、色鮮やかな百本のバラの花を並べさせました。
その百本のバラは、どれも形が完璧で、色も美しく、香りまで漂っています。しかし、その中の九十九本は、職人が絹の布や蜜蝋(みつろう)で作った、精巧(せいこう)な「造花」でした。本物のバラは、たった一本だけ混ざっています。

「さあ、王様。ここから一歩も動かずに、どれが本物のバラかを見抜いてください。ただし、触ることも、近くに寄って匂いを嗅ぐことも許されません」

これにはソロモン王も困り果てました。どんなに目を凝らして見ても、造花の出来栄えがあまりに素晴らしくて、どれが本物か全く見分けがつきません。
家来たちも、「あっちが本物だ」「いや、こっちだ」とヒソヒソ話しますが、確かなことは誰にも分かりません。

(弱ったな……。もし間違えたら、イスラエルの知恵が笑われてしまう。これではどちらが本物か、神様にしか分からないではないか)

王様が冷や汗をかき始めたその時です。
窓の外から、かすかに「ブーン」という羽音が聞こえてきました。

一匹の小さな蜂が、開いた窓からスーッと部屋の中に入ってきたのです。それは、いつか王様が逃がしてあげた、あの時の小さな蜂でした。
「王様、約束を守りに来ましたよ」
蜂は、王様の耳元で小さくささやくと、テーブルの上を静かに飛び回りました。

女王も家来たちも、小さな蜂のことなど気にも留めていません。しかし、蜂は迷うことなく、ある一本の花のところに降り立ちました。その花は、見た目には他の九十九本と全く同じに見えます。けれど、蜂には分かっていました。本物の花だけが持っている、命の香りを。

蜂が止まったその花こそが、唯一の「本物のバラ」でした。

ソロモン王はニッコリと微笑んで、その花を指差しました。
「女王よ、本物のバラは、その蜂が休んでいる一本です」

女王は驚き、深く頭を下げました。
「お見事です、ソロモン王。あなたの知恵は、私たちが想像もつかないほど深い。あなたは人間だけでなく、小さな自然の使いまでも見方につけていらっしゃるのですね」

シバの女王が帰ったあと、ソロモン王は窓辺に止まった小さな蜂に、優しく話しかけました。
「ありがとう、小さな友よ。私は、お前が私を助けてくれるなんて、これっぽっちも信じていなかった。でも、本当の知恵とは、大きな力を持つことではなく、お前のような小さき者の力を信じ、大切にすることだったのだな」

蜂は満足そうに羽を鳴らし、午後の光の中へと帰っていきました。

この物語は、私たちに大切なことを教えてくれます。
どんなに勉強ができても、どんなにお金を持っていても、一人で生きているわけではありません。小さな虫、道端の草、そして隣にいる友達。自分よりも小さく、弱そうに見える存在の中にも、自分を助けてくれる素晴らしい力が隠されているのです。

相手を大切にすることは、いつか自分を大切にすることにつながる。ソロモン王が鼻を刺された痛みよりも、蜂を許した「優しさ」を覚ぼえていたからこそ、この奇跡は起きたのですよ。

子どもへの問いかけ(いっしょに考えてみよう)
1) ソロモン王が蜂に「助けてあげる」と言われたとき、どうして笑ったのかな?
2) 蜂が本物の花を見つけられたのは、どうしてだと思う?
3) あなたの周りにいる、小さくても「すごい力」を持っているものは何があるかな?

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