神様を見せておくれ! 〜太陽と皇帝のガマンくらべ〜

神様を見せておくれ! 〜太陽と皇帝のガマンくらべ〜 知恵と機転
【今日のお話のポイント】
・目に見えるものだけが、この世のすべてではない
・本当の偉大さを前にしたとき、謙虚(けんきょ)になることの大切さ
・自分の「限界」を知ることは、恥ずかしいことではなく、賢くなるための第一歩

むかしむかし、世界中を支配していたローマ帝国に、ハドリアヌスという名前のとても力のある皇帝(こうてい)がいました。皇帝は、自分が世界で一番偉いと信じて疑いませんでした。

ある日のこと、皇帝は街で評判の知恵者、ラビ・ヨシュアを宮殿に呼び出しました。皇帝は、ヨシュアが信じている「目に見えない神様」のことが、どうしても気に入らなかったのです。

「おい、ヨシュアよ。お前たちはいつも、目に見えもしない神を拝(おが)んでいるな。私の国の神々は、金や銀で作られていて、いつでも見ることができる。立派で強そうだ。それに比べて、お前の神はどこにいるんだ? もし本当にお前の神が偉大だというなら、今すぐ私の前に連れてきて見せてみろ!」

ヨシュアは困った顔をして答えました。
「陛下、それは無理な相談です。私たちの神様は、人間の目では直接見ることができないほど、あまりにも眩(まぶ)しく、あまりにも巨大な存在なのです」

皇帝は鼻で笑いました。
「ハッハッハ! 見せられないというのは、いないのと同じだ。私はこの世界の王だぞ。私に見せられないものなど、この世に一つだってあるはずがない。さあ、今すぐ見せろ。さもなければ、お前の言葉はすべて嘘(うそ)だと決めつけるぞ!」

ヨシュアは少し考えたあと、ニヤリと笑って言いました。
「……分かりました。陛下がそこまでおっしゃるなら、神様をお見せする準備をしましょう。ただ、その前に一つだけ、神様の『家来』の一人に挨拶(あいさつ)をしていただかなければなりません。よろしいでしょうか?」

「家来だと? ほう、面白い。いいだろう。どこにいるんだ?」

ヨシュアは皇帝を宮殿の外、雲一つない真っ青な空の下へと連れ出しました。その日は、夏の盛りの、じりじりと焼けるような暑い日でした。ちょうどお昼どきで、太陽が空の真ん中でギラギラと輝いています。

ヨシュアは空を指さして言いました。
「陛下、あそこにいらっしゃるのが、神様の家来の一人です。さあ、まずはあの方をじっと見つめて、ご挨拶をしてください」

皇帝は「なんだ、そんなことか」と、空を見上げました。
ところが、次の瞬間。

「うわあああ! 眩しい! 目が、目が痛い!」

皇帝は慌てて手で目を覆い、顔を背けました。あまりの眩しさに、涙がボロボロとこぼれ、目の前が真っ暗になってしまいました。

「おい、ヨシュア! 私をバカにしているのか! あんな太陽を真っ正面から見られるわけがないだろう! まぶしすぎて、一瞬だって見ていられないぞ!」

ヨシュアは、涼しい顔をして答えました。
「おやおや、陛下。あそこに浮かんでいる太陽は、神様がお作りになった数えきれないほどの星の一つに過ぎません。いわば、神様の宮殿の、玄関に置いてある『小さなランプ』のようなものです」

皇帝が涙を拭きながら聞き入る中、ヨシュアは続けました。

「陛下は今、そのたった一つのランプですら、眩しすぎて見ることができませんでした。それなのに、そのランプを何千億個もお作りになり、宇宙のすべてを動かしている『ご主人様』を、どうしてこの小さな人間の目で見ることができましょうか?」

皇帝はぐうの音も出ませんでした。
自分が世界で一番偉いと思っていたけれど、空に浮かぶたった一つの太陽にすら、自分の目が勝てないことを思い知らされたのです。

ヨシュアは優しく付け加えました。
「陛下。目に見えるものは、壊れたり、古くなったりします。でも、太陽の光を熱くし、雨を降らせ、私たちの命を支えている『目に見えない力』は、決して衰えることがありません。本当にすごいものは、目で見ようとするのではなく、心で感じようとするのが、一番の知恵なのですよ」

皇帝は、空を見上げるのをやめて、深くため息をつきました。
「……参ったな、ヨシュア。お前の勝ちだ。私は自分の力の限界を知ったよ。目に見えないものの方が、目に見えるものよりずっと力が強いことがあるのだな」

それからの皇帝は、以前よりもずっと謙虚(けんきょ)になり、目に見えない人々の苦しみや、心の声にも耳を傾ける、賢い支配者になったということです。

このお話は、私たちに「謙虚さ」という大切なプレゼントをくれます。
「自分は何でも知っている」「自分は一番強い」と思っているとき、人は本当の真実を見失ってしまいます。
太陽を見上げて「眩しい!」と感じるように、世界には自分の力ではどうしようもない大きなものがたくさんある。それを知るだけで、私たちの心はもっと広く、豊かになれるのです。

子どもへの問いかけ(いっしょに考えてみよう)
1) 皇帝が太陽を見たとき、どうして「痛い!」と言ったのかな?
2) ヨシュアが太陽を「玄関のランプ」に例えたのは、どうしてだと思う?
3) あなたの周りで「目には見えないけれど、すごく大切で力強いもの」って、ほかに何があるかな?(空気、愛、電気、知恵、など)

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