空飛ぶ先生と三つの教え 〜知識を「知恵」に変える方法〜

bird-three-wisdoms 知恵と機転
【今日のお話のポイント】
・「知っている」ことと「できる」ことは違う
・一度終わったことをいつまでも悔やんでも、前には進めない
・甘い言葉や、ありえない話をすぐ信じないための「考える力」を持つ

むかしむかし、ある森に、とても腕のいい猟師(りょうし)がいました。彼は罠(わな)を仕掛けるのが得意で、どんなに素早い動物でも捕まえることができました。

ある日のこと、猟師の仕掛けた網に、見たこともないほど美しく、不思議な輝きを放つ小さな鳥がかかりました。猟師がその鳥を掴もうとすると、驚いたことに、鳥が人間の言葉でこう話しかけてきたのです。

「猟師さん、お願いです。私を逃がしてください。私はこんなに小さな鳥です。私を食べても、あなたのお腹は少しも膨らまないでしょう。でも、もし私を自由にしてくれたら、あなたが生きていくために最も役立つ『三つの知恵』を教えてあげましょう」

猟師は驚きましたが、鳥の賢そうな目に惹かれ、興味を持ちました。
「ほう、三つの知恵か。それが本当に役に立つものなら、お前を逃がしてやってもいいぞ。まず、一つ目を教えてみろ」

鳥は答えました。
「一つ目の知恵はこれです。『過ぎ去ってしまったことを、いつまでも嘆(なげ)いてはいけない』

猟師はうなずきました。「なるほど、確かに。終わったことをいつまでもクヨクヨしても仕方のないことだ。いい教えだ。では、二つ目は?」

鳥は続けました。
「二つ目の知恵はこれです。『自分の手が届かないものを、無理に追い求めてはいけない』

猟師はまたうなずきました。「欲張りすぎて身を滅ぼすのは愚かなことだからな。これも良い教えだ。さあ、最後の一つを教えてくれ」

鳥は言いました。
「三つ目の知恵は、私を放してくれたら、空の上から教えましょう」

猟師は鳥を信じて、そっと手を広げました。自由になった鳥は、パッと羽ばたき、近くの高い木の枝まで飛んでいきました。そこから、鳥は猟師を見下ろして、ケラケラと笑い始めたのです。

「ハハハ! まぬけな猟師さん。お前さんは、とんでもないお宝を逃がしてしまったんだよ。実は、私のお腹の中には、大きなニワトリの卵ほどもある、巨大な『ダイヤモンド』が隠されているんだ。私を逃がさずに殺していれば、お前さんは一生遊んで暮らせるほどの大金持ちになれたのにね!」

それを聞いた猟師は、顔を真っ赤にして悔しがりました。
「なんということだ! そんなお宝を逃がしてしまったなんて! ああ、なんてもったいないことをしたんだ!」

地団駄(じだんだ)を踏んで悔しがる猟師は、必死に木を登って鳥を捕まえようとしましたが、鳥はさらに高い枝へとひらひらと逃げてしまいます。猟師は木から落ちそうになりながら、泣きそうな声で叫びました。
「お願いだ、鳥さん! 戻ってきておくれ! 最高の餌(えさ)をあげるから!」

すると、鳥は静かになり、冷ややかな声でこう言いました。
「猟師さん。あなたは今、私が教えたばかりの二つの知恵を、もう忘れてしまったのですか?」

猟師はハッとしました。

鳥は諭(さと)すように言いました。
「一つ目。あなたは、私を逃がしたという『過ぎ去ったこと』を、今さっきまで激しく嘆いていましたね。
二つ目。あなたは、木の上にいる私という『手の届かないもの』を、無理に追いかけようとしましたね。
そして、何より残念なのは……あなたは私の『嘘』を、簡単に信じてしまったことです」

鳥は自分の小さなお腹を見せて言いました。
「よく考えてみてください。私の体は、こんなに小さいのです。そんな私のお腹の中に、どうしてニワトリの卵ほどの大きなダイヤモンドが入るはずがあるでしょうか? あなたは三つ目の知恵を聞く前に、自分の頭で『考える』ということを忘れてしまったのですよ」

猟師は恥ずかしくて、顔を上げることができませんでした。鳥の言う通り、彼は教えを「知っていた」だけで、全く「使えて」いなかったのです。

鳥は最後に、三つ目の知恵を授けました。
「三つ目の知恵はこれです。『今、自分が持っている教えを、正しく使いなさい』

そう言い残すと、美しい鳥は空の彼方へと飛び去っていきました。
猟師は一人、静かな森に残されました。彼は空っぽになった網を見つめましたが、もう悔しがることはありませんでした。彼は鳥から受け取った「三つの知恵」を、心の中の深い場所にしっかりと刻み込みました。

「知っているだけでは、何の意味もない。それをいつ、どうやって使うかを考えることが、本当の知恵なのだ」

それからの猟師は、どんなことがあってもあわてず、自分の頭でじっくりと考え、穏やかに暮らしたということです。

子どもへの問いかけ(いっしょに考えてみよう)
1) 猟師さんは、鳥に「お宝があるよ」と言われたとき、どうしてあんなに悔しがったのかな?
2) 鳥さんが言った「ありえないこと」って、どんなことだった?(ヒント:鳥の大きさを思い出してね)
3) あなたがこれまでに覚えた「いい教え」や「お約束」を、実際に使ってみたことはあるかな?

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