・見た目の美しさと、中身の素晴らしさは別のものである
・「知恵」や「心」という目に見えないものこそが、人生を豊かにする
・自分や相手を、外見だけで判断しない大切さを学ぶ
むかしむかし、ある国にヨシュアという名前のとても賢いラビ(先生)がいました。ヨシュア先生は、どんな難しい問題もスルスルと解いてしまう、国中で一番の知恵者として有名でした。
ところが、ヨシュア先生には一つだけ、ちょっとした特徴がありました。それは、見た目がちっとも「かっこよくない」ことでした。顔はデコボコしていて、背も低く、おまけに着ている服もいつも質素なものでした。
ある日、ヨシュア先生は王様に招かれて宮殿へ行きました。そこで、王様の娘である美しい王女様に出会いました。王女様はヨシュア先生の評判を聞いていましたが、実際にその姿を見て、思わずクスクスと笑ってしまいました。
「まあ、あなたが噂のヨシュア先生? なんてことでしょう。こんなに見栄えの悪い器の中に、そんなに素晴らしい知恵が入っているなんて、とても信じられないわ!」
王女様は意地悪で言ったわけではありませんでしたが、美しいものに囲まれて育った彼女にとって、ヨシュア先生の姿はあまりに「普通」すぎたのです。
ヨシュア先生は少しも怒らず、静かに微笑んで王女様に尋ねました。
「王女様、一つお聞きしてもよろしいでしょうか。お父様である王様が大切にされている『最高級のワイン』は、どのような器(つぼ)に入れて保存されているのですか?」
王女様は不思議そうな顔をして答えました。
「そんなの決まっているじゃない。普通の、土で作られた茶色のツボよ。どこの家にもあるような、安っぽい土のツボに入っているわ」
するとヨシュア先生は、大げさに驚いてみせました。
「おやおや、それは驚きました! 世界で一番偉大な王様が、そんな安物の器にワインを入れているなんて。金や銀で作られた、キラキラ輝く豪華なツボにこそ、最高級のワインはふさわしいのではありませんか?」
王女様はハッとしました。「そう言われてみれば、その通りだわ!」
王女様はすぐに召使いたちに命じました。
「今すぐ、ワインをすべて土のツボから移し替えなさい! 純金でできた黄金のツボと、白銀のツボにワインを入れ替えるのです。王家にふさわしい器を使いなさい!」
さて、数日後のことです。王様が大切なお客様をもてなそうとして、黄金のツボからワインを注ぎました。ところが、グラスに入ったワインを一口飲んだ王様は、「うわっ!」と叫び、すぐに吐き出してしまいました。
「なんだこれは! ワインがすっかり酸っぱくなって、腐ってしまっているではないか! 私の最高級のワインが台無しだ!」
王様は大怒りです。調べてみると、王女様がツボを入れ替えさせたことがわかりました。王様は王女様を呼び出し、「なぜこんな余計なことをしたんだ!」と厳しく叱りました。
困った王女様は、ヨシュア先生を呼び出しました。
「ヨシュア先生、あなたの言った通りにしたのに、最高のお宝だったワインがみんなダメになってしまったわ。どうしてこんなことになったの?」
ヨシュア先生は、優しく答えました。
「王女様、ワインというものは、土のツボのような『普通で、飾り気のない器』に入れているからこそ、美味しく熟成し、その味を守ることができるのです。もし金や銀のツボに入れてしまえば、熱が伝わりやすく、すぐに味が変わってダメになってしまいます。見た目は立派でも、中身を守るにはふさわしくない器もあるのですよ」
王女様は、ハッと自分の間違いに気づきました。
ヨシュア先生は続けました。
「知恵も、これと同じなのです。見た目がどんなに立派でも、中身が空っぽな人もいれば、見た目が質素でも、その中に宇宙のように広い知恵を蓄えている人もいます。大切なのは『器』の美しさではなく、その中にある『宝物の価値』なのです」
王女様は、ヨシュア先生のデコボコした顔をじっと見つめました。しかし、もう笑う気持ちにはなりませんでした。それどころか、ヨシュア先生が、黄金のツボよりもずっと神々しく、輝いて見えたのです。
「ヨシュア先生、失礼なことを言ってごめんなさい。私は目に見えるものばかりを気にして、本当の美しさを知ろうとしていませんでした」
王女様は心から謝り、それからは外見だけで人を判断することをやめました。そして、ヨシュア先生からたくさんの知恵を学び、誰からも愛される賢いお姫様になったということです。
このお話は、私たちに教えてくれます。
どんなに素敵な服を着て、きれいな飾りをつけていても、心の中が空っぽなら、それは「酸っぱくなったワイン」のようなものです。反対に、自分を飾り立てることをしなくても、一生懸命に学び、心を磨いている人の知恵は、土のツボの中のワインのように、時が経つほどに価値を増していくのです。
1) 黄金のツボに入れたワインが、どうしてダメになってしまったのかな?
2) 王女様は、最後にどうしてヨシュア先生が「輝いて」見えたんだと思う?
3) あなたにとって、目には見えないけれど「一番大切にしたい宝物」って、どんなものかな?



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