・本当の勉強は、一人で本を読むだけでは完成しない
・自分と違う意見を言ってくれる人こそが、自分を成長させてくれる
・「対話」は、知識を磨き、真実を見つけるための最高の方法
むかしむかし、イスラエルの街に、ヨハナンという名前のとても素晴らしい先生がいました。ヨハナン先生は街で一番の知恵者で、その教えを聞くために、毎日たくさんの弟子たちが集まっていました。
ヨハナン先生には、リキシュという名前の「最高の親友」であり「最高の学び相手」がいました。この二人の勉強の仕方は、ちょっと変わっていました。
二人が勉強を始めると、街中に響き渡るような大声で議論が始まります。
ヨハナン先生が「これは、こういう意味だよ」と言うと、リキシュはすぐに「いや、それは違う! なぜなら、こういう理由があるからだ!」と二十四もの反対意見をぶつけます。
するとヨハナン先生も負けじと、「なるほど、それなら私は二十四の証拠を出して、私の正しさを説明しよう!」と言い返します。
二人は机を叩き、身を乗り出し、まるで喧嘩をしているかのように激しく話し合います。でも、勉強が終わると二人はガシッと握手をし、「今日もいい学びができたな!」と笑顔で帰っていくのでした。
ところが、ある悲しい出来事が起きました。親友のリキシュが、病気で亡くなってしまったのです。
ヨハナン先生は、深い悲しみにくれました。毎日、力なくため息をつき、本を開いてもぼんやりするばかりです。
心配した弟子たちは、先生を励まそうと相談しました。
「ヨハナン先生があんなに落ち込んでいるのは、議論をする相手がいないからだ。街で一番優秀な弟子を、先生の新しいパートナーに選ぼう」
こうして、若くてとても頭の良いエラザルという弟子が、先生の新しい学び相手に選ばれました。
次の日の朝、エラザルはヨハナン先生の前に座りました。
先生が寂しそうに、「……今日は、この一節について学ぼう。これは、こういう意味だと思うんだが」と話し始めました。
するとエラザルは、丁寧に頭を下げてこう言いました。
「はい、先生! その通りです! 先生のおっしゃることを裏付ける証拠を、私は二十四個も見つけました。先生は、やっぱり世界一正しいです!」
ヨハナン先生は、少しだけ顔をしかめましたが、別の話を続けました。
「では、この問題についてはどうかな? 私はこう思うんだ」
エラザルは、また嬉しそうに答えました。
「素晴らしいです、先生! まったくその通りです! その考えが正しいという理由を、さらに二十四個付け加えさせていただきます!」
エラザルは、先生を喜ばせようと、一生懸命に「先生がいかに正しいか」を褒め称えました。先生が何を言っても、「素晴らしい!」「その通りです!」と、イエスマン(何でも賛成する人)になって答えたのです。
ところが、どうでしょう。
ヨハナン先生は突然、持っていた本をバタン!と閉じると、大声をあげて泣き出してしまったのです。
「ああ、リキシュ! 私の親友よ! 私はお前がいなくて寂しくてたまらない!」
驚いたエラザルは、あわてて尋ねました。
「せ、先生! どうしたのですか? 私は先生の意見が正しいという証拠を、こんなにたくさん出したではありませんか。どうして泣いたりするのですか?」
ヨハナン先生は、涙を拭きながら、エラザルに静かに言いました。
「エラザルよ、お前の親切はよく分かる。でもな、私が欲しいのは『あなたは正しい』と言ってくれる人ではないのだ。
亡くなったリキシュは違った。私が何かを言えば、彼は必ず『それは違う!』と反対してくれた。彼が二十四の反対意見をぶつけてくるたびに、私は自分の考えをもっと深く、もっと鋭く磨き上げることができたのだ」
ヨハナン先生は、窓の外を眺めながら続けました。
「お前が『先生は正しい』といくら言ってくれても、私の知識は今のまま止まってしまう。相手が反対してくれるからこそ、自分一人では気づかなかった『新しい真実』を見つけることができるんだ。学びとは、自分の正しさを確認することではなく、二人で磨き合って、より高いところへ登っていくことなんだよ」
弟子たちは、先生の言葉を聞いてハッとしました。
仲良くすることと、意見を合わせることは違う。本当の「学びの友」とは、お互いの知恵をぶつけ合い、火花を散らしながら、一緒に真実の光を探す人のことなのです。
その後、ヨハナン先生は「反対意見を大切にする」という教えを弟子たちに伝え続けました。
今でも、タルムードを学ぶ場所(イェシバ)では、二人一組で「それは違う!」「なぜだ!」と激しく議論する声が響いています。それは、相手を嫌いだからではなく、相手のことを最高に尊敬しているからこそできる、特別な「対話」の形なのです。
このお話は、私たちに「友達との話し合い」の本当の楽しさを教えてくれます。
みんなと違う意見を持つことは、悪いことではありません。むしろ、勇気を出して「僕はこう思うよ」と伝えることで、あなたと友達の知恵は、一人でいる時よりもずっとキラキラと輝き始めるのです。
1) ヨハナン先生が、自分の意見に全部賛成してくれる弟子に満足しなかったのは、どうしてかな?
2) あなたが勉強しているとき、自分と違う意見を言われたら、どんな気持ちになる?
3) あなたにとっての「最高の学び相手(一緒に考えると楽しくなる人)」は誰かな? その人とどんなお話をしたい?



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