黄金の宝物は誰のもの? 〜平和な国の不思議な裁判〜

黄金の宝物は誰のもの? 〜平和な国の不思議な裁判〜 正義と親切
【今日のお話のポイント】
・「自分の得」よりも「正しさ」を優先する美しさを知る
・争いを解決するのは、どちらかが折れることではなく、新しい「幸せ」を作ること
・世界が平和であるために、一人一人がどのような心を持つべきか考える

むかしむかし、世界中を征服しようとしていた、とても大きな国の「征服王」がいました。彼は強い軍隊を率いて、遠い遠い、果てしなく遠い場所にある小さな国へとたどり着きました。

そこは、これまでに見たことがないほど平和な国でした。人々は争うことを知らず、お互いに助け合って暮らしていました。征服王は不思議に思い、その国の王様に会って、彼らがどのように国を治めているのかを見学させてもらうことにしました。

ちょうどその時、王様のもとに二人の男がやってきました。裁判を受けに来たのです。征服王は思いました。
「ほう、こんな平和な国でも争いごとはあるのだな。どれ、どんなふうに裁くのか見てやろう」

一人の男が言いました。
「王様、聞いてください。私は先日、この隣人から古い畑を買い取りました。ところが、その畑を耕していたら、地中から金貨がいっぱいに入った『黄金の宝箱』が出てきたのです。私は畑を買いましたが、宝箱まで買ったわけではありません。だからこれを隣人に返したいのですが、彼は受け取ってくれないのです」

すると、もう一人の男が困った顔をして言いました。
「いいえ、王様。私は畑を売ったときに、その中にあるすべてのものを一緒に売ったのです。ですから、その宝箱はもう私の物ではありません。それを見つけた彼こそが、受け取るべきなのです」

征服王はひっくり返らんばかりに驚きました。
彼の国では、人々は「少しでも多く自分のものにしよう」と争い、嘘をついてまで宝物を奪い合うのが当たり前でした。ところが、この国の二人は「これは自分の物ではない」と言い張って、宝物を押し付け合っているのです。

平和な国の王様は、少し考えてから二人に尋ねました。
「あなたには、息子さんがいますか?」
最初の男が答えました。「はい、立派な息子が一人おります」

「では、あなたには、娘さんがいますか?」
もう一人の男が答えました。「はい、年頃の美しい娘が一人おります」

王様はニッコリと微笑んで、こう判決を下しました。
「それなら、あなたの息子さんと、あなたの娘さんを結婚させなさい。そして、その黄金の宝箱は、新しく家族になる二人のための結婚祝いとして使いなさい。そうすれば、どちらの家も幸せになり、宝物も正しく使われることになります」

二人の男は「それは素晴らしい考えだ!」と手を取り合って喜び、仲良く帰っていきました。

それを見ていた征服王は、あまりの出来事に言葉を失っていました。王様が征服王に尋ねました。
「いかがですか? 私の裁きは、おかしなものでしたか?」

征服王はため息をついて答えました。
「いや、驚きました。私の国だったら、こんなことはありえません。もし同じことが起きたら、宝物を見つけた男も、畑を売った男も、二人とも牢屋に入れて、宝物は国が全部没収してしまうでしょうな」

今度は、平和な国の王様が驚く番でした。彼は悲しそうな顔をして、征服王に三つの不思議な質問をしました。

「王よ、あなたの国では、太陽は毎日昇りますか?」
「ああ、もちろんだ」と征服王は答えました。

「あなたの国では、雨は降りますか?」
「ああ、恵みの雨が降るよ」

「では、あなたの国には、牛や羊などの動物は住んでいますか?」
「ああ、たくさんいるとも」

平和な国の王様は、空を見上げて静かに言いました。
「そうですか……。もし、あなたの国に太陽が昇り、雨が降るのだとしたら、それはあなたたち人間が立派だからではありません。罪のない動物たちが、生きていくために必要な水を飲み、草を食べられるように、神様が恵みを与えてくださっているのでしょう。 あなたたちのような欲張りな人たちのために、お天道様が照っているのではないのですよ」

征服王は、その言葉を聞いて顔が真っ赤になりました。自分たちが「力」や「富」を追い求めている間に、人間として一番大切な「誠実さ」や「謙虚さ」を忘れてしまっていたことに気づいたのです。

征服王は、その平和な国を攻撃するのをやめました。彼は自分の国に帰り、家来たちにこう伝えました。
「我々が本当に手に入れるべきなのは、他国の領土ではない。あの国の二人が持っていたような『正しい心』なのだ」

このお話は、私たちに「正義」の本当の意味を問いかけています。
誰かが得をして、誰かが損をするのが裁判ではありません。お互いが「正しくありたい」と願うことで、誰も予想しなかったような新しい幸せ(結婚して家族になる、という解決策)が生まれるのです。

自分だけが良ければいい、という心で生きるのか。それとも、相手を思いやり、正しさを守る心で生きるのか。
太陽が明日も私たちを照らしてくれるのは、私たちがどちらの心で生きているからでしょうか。

子どもへの問いかけ(いっしょに考えてみよう)
1) 二人の男の人は、どうして宝物を「自分のもの」にしなかったのかな?
2) 王様が「二人の子どもを結婚させる」と言ったとき、どんな良いことが起きたと思う?
3) 「太陽が昇るのは、動物たちのためかもしれない」という言葉を聞いて、あなたはどう感じたかな?

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