難しい問題にぶつかったとき、真正面から考えるだけでなく、少し視点を変えてみる(何かを足したり引いたりしてみる)と、思いがけない解決策が見つかることがあります。
むかしむかし、太陽が照りつける砂漠の真ん中にある、活気あふれる町に、一人の裕福な商人が住んでいました。
彼は正直者で働き者として知られ、たくさんのラクダや貴重な品々を持っていました。
商人には、三人の息子がいました。
長男は力が強く、次男は計算が得意で、三男は心優しい青年でした。
商人はいずれ自分の財産をこの三人の息子たちに分け与え、幸せに暮らしてほしいと願っていました。
ところがある日、商人は突然重い病にかかり、あっという間に天国へと旅立ってしまいました。
息子たちは深い悲しみにくれましたが、父親が残してくれた遺言書を開いて、さらに途方に暮れることになります。
その遺言書には、こう書かれていました。
「私が生涯をかけて築いた財産のうち、ラクダ17頭を息子たちに分け与える。
長男には、その半分の数を。
次男には、三分の一の数を。
そして三男には、九分の一の数を譲るものとする。」
息子たちは何度も遺言書を読み返しました。
17頭のラクダ。
この数字は、2でも3でも9でも、きれいに割り切ることができません。
長男が半分をもらうと、8頭と半分のラクダになってしまいます。
ラクダを半分に切ってしまうわけにはいきません。
次男の分も、三男の分も、どうしても端数が出てしまいます。
「父さんは何を考えてこんな遺言を残したんだ?」
長男が不満そうに言いました。
「きっと、一番力の強い私に多くを継がせたかったに違いない。
私が9頭もらおう。」
すると、計算が得意な次男が反論しました。
「いや、それはおかしい。遺言は正確に守るべきだ。でも、どうやっても分けられないじゃないか。」
心優しい三男は、兄たちが言い争うのを見て、ただ悲しそうな顔をするばかりでした。
何日も何日も話し合いましたが、良い考えは浮かばず、兄弟の仲はどんどん険悪になっていきました。
そんな噂を耳にした町の人々は、口をそろえてこう言いました。
「それなら、丘の上の小さな家に住む、ラビ・ヨシュア様にご相談してみてはどうだろうか。あの方なら、どんな難しい問題でも知恵を貸してくださるだろう。」
息子たちは藁にもすがる思いで、賢者として名高いラビ・ヨシュアのもとを訪ねました。
ラビ・ヨシュアは、長く白いひげをたくわえた、穏やかな瞳の老人でした。
彼は静かに息子たちの話に耳を傾け、そして困り果てた三人の顔をじっと見つめました。
しばらくの沈黙の後、ラビ・ヨシュアはにっこりと微笑みました。
「なるほど、それはお父様も悩まれたことでしょう。しかし、心配はいりません。私に良い考えがあります。」
そう言うと、ラビは立ち上がり、自分の家で飼っている一頭のラクダを連れてきました。
「さあ、この私のラクダを、君たちのお父さんの17頭のラクダに加えてごらんなさい。」
息子たちは戸惑いました。
「ラビ様、それではラクダが全部で18頭になってしまいますが…。」
「それでいいのです。」
ラビは優しく言いました。
「さあ、18頭になったラクダを、もう一度お父さんの遺言通りに分けてみましょう。」
息子たちは言われた通りにしてみることにしました。
まず、長男が遺産の半分を受け取ります。
18頭の半分は、ちょうど9頭です。
長男は喜んで9頭のラクダを受け取りました。
次に、次男が三分の一を受け取ります。
18頭の三分の一は、ちょうど6頭です。
次男も満足そうに6頭のラクダを自分のものにしました。
最後に、三男が九分の一を受け取ります。
18頭の九分の一は、ちょうど2頭です。
三男もにっこり笑って、2頭のラクダを引き取りました。
不思議なことが起こりました。
三人の息子たちがそれぞれ受け取ったラクダの数を足してみると、9頭たす6頭たす2頭で、合計は17頭になりました。
そして、そこには一頭だけラクダが残されています。
それは、最初にラビ・ヨシュアが貸してくれた、まさにその一頭だったのです。
「さあ、これで誰も傷つくことなく、お父さんの遺言通りに財産を分けることができましたね。」
ラビ・ヨシュアはそう言うと、残った自分のラクダを連れて、静かに丘の上の家に帰っていきました。
息子たちは、ラビの驚くべき知恵と機転に心から感服しました。
彼らは争っていたことを恥じ、互いに手を取り合って、父親の遺産を大切にすることを誓い合ったのでした。
そして、この町では、難しい問題が起きると、人々はラビ・ヨシュアのこの出来事を思い出し、「視点を変えれば、きっと道は開ける」と語り継ぐようになったということです。
ラビ・ヨシュアは、なぜ自分のラクダを1頭加えるだけで、みんなが納得する分け方ができたのだと思う?



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