先に払う?あとで払う? 〜“約束”が守られる仕組み〜

先に払う?あとで払う? 〜“約束”が守られる仕組み〜 知恵と機転
先に払う?あとで払う? 〜“約束”が守られる仕組み〜
【今日のお話のポイント】
「先払い」「あと払い」どちらにも良さと弱点がある。
トラブルを防ぐカギは、お金より“約束の形”
小さくてもいいから、最初に決めて、見える形にすると安心になる。

※このお話は、タルムードで語られる「売買・支払い・信用(約束)の扱い」に関する考え方(Bava Metzia などで議論されるテーマ)を、子ども向けにやさしく物語にしたものです。

ユウタは、工作が大好きでした。
紙、のり、木の棒、輪ゴム。
家にあるものを組み合わせて、変な形のロボットや、走る車を作ってしまいます。

ある日、学校の帰り道。
文房具屋さんの前で、ユウタは足を止めました。

ガラスの向こうに見えたのは――
“組み立て式の木のからくりキット”。

歯車が回ると、小鳥がピョンと飛び出す仕組み。
見た瞬間、ユウタの心は決まりました。

(これ、絶対作りたい)

でも値札を見ると、ちょっと高い。
ユウタのおこづかいだけじゃ足りません。

そのとき、店の奥から店主のミナさんが出てきました。
ミナさんは、ユウタが工作好きだと知っていました。

「ユウタくん、それ気になった?」
ユウタは勢いよくうなずきました。
「うん。でも今すぐは買えない…」

ミナさんは少し考えて、言いました。
「じゃあ、取り置き(とりおき)にする?」
「お金はあとででもいいよ」

ユウタの目が輝きました。
「ほんと!?」

でも、その瞬間――
ミナさんの顔がちょっとだけ困ったように見えました。
ユウタは気づきませんでしたが、ミナさんの頭の中には別の心配がよぎっていました。

(“あとで”って言ったまま、来なくなったらどうしよう)
(このキット、ほかのお客さんにも人気なのに…)


その夜、ユウタは家でお母さんに言いました。
「文房具屋さんが、あとで払っていいって!」

お母さんはにこっと笑いましたが、すぐに聞き返しました。
「“あとで”って、いつ?」
ユウタは止まりました。
「……いつだろ」

「約束の言葉がふわっとしてるとね、トラブルになりやすいんだよ」
お母さんはやさしく言いました。
「先払いも、あと払いも、悪いわけじゃない」
「でも、決めないと、どっちも危ない」

ユウタは首をかしげました。
「先払いって、何が危ないの?」

お母さんは、キッチンで例を出しました。
「たとえば、お母さんが“先に全部お金を払った”のに、品物が届かなかったら?」
ユウタは目を丸くしました。
「え、それ最悪」

「そう。先払いは“相手を信じる”が強い」
「あと払いは逆で、“相手が信じてくれる”が強い」
「だから、どっちも“信用”が必要なんだ」

ユウタは少しだけ真剣になりました。
(信用って、ふわふわしてるけど大事なんだな)


次の日。
ユウタは放課後、ミナさんの店に行きました。
「取り置き、お願いしたい」
そして、言いました。
「でも…“いつ払うか”決めたい」

ミナさんは驚いて、すぐ笑いました。
「いいね。そういうの大事」

ミナさんはカウンターの下から、小さなカードを出しました。
そこには、店のスタンプと、手書きの枠。

「じゃあ、こうしよう」
「“約束カード”を作る」

カードに書くのは3つだけ。

  1. 商品名
  2. 支払いのタイミング
  3. 受け取りのタイミング

ユウタはペンを持ちました。
「支払いは…来週の金曜日まで」
「受け取りは…払った日に持って帰る」

ミナさんはうなずいて、言いました。
「じゃあ、お金は全部じゃなくてもいいよ」
「“手付金(てつけきん)”っていって、少しだけ先に預かる方法もある」

「手付金?」
「うん。小さな“約束のしるし”」
「全部先払いはこわい。でも、全部あと払いも不安」
「だから、ちょっとだけ先に払って、残りは後で」

ユウタは、なるほど!と思いました。
(ハイブリッドだ)

ユウタは今日のおこづかいから、少しだけ出しました。
ミナさんはカードにスタンプを押して、ユウタにも同じ内容の控えを渡しました。

「これで安心だね」
ミナさんが言いました。

ユウタも笑いました。
「うん。これなら忘れない」


その帰り道。
ユウタは、友だちのケンに会いました。
ケンが言いました。
「なあ、その店、あと払いできるならさ、ぼくも“あとで払う”って言って買っちゃおうかな」

ユウタは、前なら「いいじゃん!」と言っていたかもしれません。
でも今日は違いました。

「ねえ、ケン」
「“あとで”って、いつ?」
「店の人は、どうやって安心するの?」

ケンは黙りました。
「……たしかに」

ユウタは、約束カードの控えを見せました。
「こうやって“見える約束”にすると、店もぼくも安心なんだ」
「信用って、気持ちだけじゃなくて、“仕組み”でも作れるんだよ」

ケンは目を丸くしました。
「なんか…大人みたい」

ユウタはちょっとだけ胸を張りました。


金曜日。
ユウタは学校が終わると、すぐ店に走りました。
ポケットには、残りのお金。
カードの控えも折りたたんで入っています。

店に入ると、ミナさんが笑って言いました。
「待ってたよ」

ユウタはお金を払いました。
ミナさんはカードに“支払い完了”の印をつけて、キットを渡しました。

箱を受け取った瞬間、ユウタは思いました。
(これ、ただ買っただけじゃない)
(“約束を守った”って感じがする)

ユウタが言いました。
「ミナさん、ありがとう」
ミナさんは首を振りました。
「ありがとうはこっち」
「約束を守ってくれるお客さんがいると、お店は安心して続けられるから」

ユウタはハッとしました。
(お店も…安心がいるんだ)

家に帰って、ユウタは箱を開けました。
歯車は小さくて、説明書は細かい。
でも、不思議と落ち着いていました。

(先払い・あと払いって、お金の話だけじゃない)
(信頼を守る話なんだ)

ユウタは、テーブルの端に“約束カード”の控えを置きました。
それは、キットよりも小さい紙なのに、すごく大事なものに見えました。

💭 いっしょに考えてみよう

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