みんなが困った日 ― ヒレル先生の「できる」を見つける知恵

みんなが困った日 ― ヒレル先生の「できる」を見つける知恵 知恵と機転
みんなが困った日 ― ヒレル先生の「できる」を見つける知恵
【今日のお話のポイント】
みんなが「無理だ…」と言うときほど、落ち着いて考えると道が見える。
知恵は、あわてる心をしずめて、できる方法を探す力なんだよ。

※このお話は、タルムードに出てくる逸話(ペサヒム66a周辺)を、子どもに読み聞かせやすい形にやさしく語り直したものです。

むかしむかし、学びの町に、年に一度だけ行われる大切なお祝いの日がありました。
町の人はその日に、心をこめて準備をし、家族で集まって、ありがたい気持ちをたしかめました。

ところがその年は、困ったことが起きました。
お祝いの日が、町の「お休みの日」と重なってしまったのです。

お休みの日には、みんなが守っている大事な決まりがありました。
重いものを運びすぎない。むやみに作業をしない。
ふだん頑張っている人が、心と体を休めるための“守りごと”です。

町の人たちはざわざわしました。

「えっ、じゃあ準備できないの?」
「決まりを破ったらダメだよね…」
「でも、このお祝いは年に一回だけだよ…」

先生たちも集まって、話し合いが始まりました。
でも、誰もすぐに答えを出せません。

「決まりは決まりだ」
「でもお祝いも大事だ」
「どうしたらいいんだ…」

話し合いは長くなり、声も少しずつ大きくなりました。
すると、だれかが思い出したように言いました。

「そうだ! ヒレル先生なら、なにか知っているかもしれない!」


ヒレル先生は、遠くの町で学びをしている先生でした。
物腰がやわらかく、どんなときも落ち着いていることで有名です。

使いの人が急いでヒレル先生を呼びに行きました。
そして、ようやく先生が学びの家に到着すると、みんながいっせいに言いました。

「先生! 大変なんです!」
「お祝いの日がお休みの日と重なってしまいました!」
「これじゃ、準備ができません!」

ヒレル先生は、みんなの顔を見回して、静かに言いました。
「まず、深呼吸しよう。あわてると、知恵が隠れてしまうからね」

先生の声は小さいのに、不思議と場が静かになりました。


ヒレル先生は、ゆっくり質問しました。

「去年や、一昨年にも、同じことは起きたかな?」
先生たちは顔を見合わせました。

「…あったかもしれない」
「でも、どうしたか覚えていない」

ヒレル先生はうなずきました。
「では、人々はそのとき、どうやって準備したんだろう?」

みんなは首をかしげました。
「わからない」
「誰に聞けば…」

そのとき、ヒレル先生が言いました。
「町の人たちは、知っているかもしれないよ」

「え、先生たちより町の人のほうが?」
ある先生が驚いて言いました。

ヒレル先生は笑いました。
「知恵は、本の中だけじゃなく、暮らしの中にもある。
さあ、見てごらん。町の人がどうしているか」


先生たちは外に出て、町の様子を見ました。
するとそこには、答えのヒントがたくさんありました。

ある人は、必要なものを前の日から準備していました。
ある人は、運ぶ量を減らす工夫をしていました。
そして中には、服のように見える袋に、必要なものを入れて持ち歩いている人もいました。

先生たちは目を丸くしました。

「えっ、それなら重い荷物を“運ぶ作業”じゃなくて…」
「決まりを守りながら、できる工夫をしている!」

ヒレル先生はうなずきました。
「そう。みんなは、“守りごと”を大切にしながら、
“お祝い”も大切にする方法を考えてきたんだ」


学びの家に戻ると、先生たちはもう一度、話し合いを始めました。
今度はさっきと違い、声が落ち着いていました。

「決まりを守るために、前の日からできることは何か」
「当日にやる作業を減らすにはどうすればいいか」
「みんなが困らない形は?」

ヒレル先生は、その話を聞きながら、必要なところだけを整理して言いました。

「大切なのは“どっちかを捨てる”ことじゃない。
両方を大事にするために、知恵を使うことだよ」

先生たちは、ぱっと顔を上げました。
「なるほど…!」


その日から、町には新しい空気が流れました。
みんなは、お休みの日の決まりを守りながら、
年に一度のお祝いも、心をこめてできるようになったのです。

そして先生たちは、この出来事をずっと覚えていました。

困ったときほど、声を大きくして勝とうとしない。
まず、落ち着いて、知恵を探す。
そして、暮らしの中にある工夫からも学ぶ。

それが、ヒレル先生の「できる」を見つける知恵でした。

💭 いっしょに考えてみよう
ヒレル先生は、どうしてすぐ答えを言わずに「町の人を見てごらん」と言ったのかな?
もしクラスで大問題が起きたら、あなたは「落ち着くために」何をしますか?

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