兄の手紙と弟の沈黙

兄の手紙と弟の沈黙 家族と人間関係
兄の手紙と弟の沈黙
【今日のお話のポイント】
言葉よりも行動が、時に心を動かします。家族の絆は、沈黙の中にも宿るのです。

昔々、とある山あいの村に、アブラハムとエリというふたりの兄弟がいました。
幼い頃はいつも一緒に遊び、野山をかけまわりながら育ちました。けれども時が経ち、父の商売を引き継いだ兄のアブラハムは都会へ、弟のエリは村に残って畑を守ることになりました。

ある年、父が病に倒れ、静かにこの世を去りました。
兄弟は悲しみに暮れながらも、遺品を整理していると、一通の封書が見つかりました。そこにはこう綴られていました。

「本当の家族とは、どんなときも背を向けない者である。たとえ離れても、心は共に歩むものである。」

兄のアブラハムは、その言葉を胸に弟を思い出しました。
昔の些細な口論で心がすれ違ってから、何年も連絡を取っていなかったのです。

アブラハムは手紙を書きました。

「すまなかった。もう一度、君に会いたい。帰りたい。」

何日経っても返事は届きませんでした。
それでもアブラハムは意を決して、村へ向かいました。父が眠る家に、あの頃と変わらない畑が広がっていました。

玄関の戸を叩くと、エリが出てきました。
何も言わず、ただ静かに頷き、兄を中へ招き入れました。

居間には、兄の好きだった夕食がすでに用意されていました。
アブラハムは言葉を探しましたが、出てきたのは涙だけでした。

ふたりは火のそばに並んで座りました。
沈黙が、すべてを語っていました。

やがて、アブラハムが小さくつぶやきました。
「ただ、帰ってきたかった。」

弟は微笑んで言いました。
「それだけで、十分だよ。」


💭 いっしょに考えてみよう
弟のエリは、なぜ返事を出さずに兄を迎えたのでしょう?
言葉を使わずに気持ちを伝える方法には、どんなものがあると思いますか?

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