・幸せや知恵は、遠くのどこかではなく、案外「自分の足元」にあるもの
・一生懸命に動くことで、初めて自分の持っているものの価値に気づく
・不思議な偶然や、誰かの何気ない言葉の中に、大きな答えが隠れている
むかしむかし、ある小さな村に、イサクという名前の男が住んでいました。
イサクはとても正直で真面目な男でしたが、家はとても貧しく、毎日「もっとお金があれば、家族に美味しいものを食べさせてあげられるのになぁ」とため息をついていました。
そんなある夜のことです。イサクが眠っていると、不思議な夢を見ました。
夢の中に光り輝く天使のような人が現れて、イサクにこう言ったのです。
「イサクよ、遠い遠い『王様の街』へ行きなさい。そこにある大きな石の橋の下を掘るのだ。そこには、お前の一生を幸せにする黄金の宝物が埋まっているぞ」
目が覚めたイサクは、「ただの夢だろう」と笑い飛ばしました。ところが、次の夜も、その次の夜も、全く同じ夢を見たのです。
「これは、きっと神様が私を助けようとしてくださっているに違いない!」
イサクは決心しました。彼はボロボロになった一足の靴と、一切れの硬いパンだけをカバンに詰めると、家族に見送られて、はるか遠くの「王様の街」へと旅立ちました。
旅は想像以上に大変でした。イサクは高い山を越え、深い川を渡り、時には雨に打たれながら歩き続けました。
「あと少しだ。橋の下には宝物が待っているんだ……!」
イサクはボロボロになった靴を励ましながら(「お前も黄金の靴にしてやるからな!」なんて話しかけながら)、何日も何日も歩きました。
そしてついに、イサクは王様の街にたどり着きました。そこには、夢で見た通りのがっしりとした大きな石の橋がありました。
「これだ! ついに見つけたぞ!」
イサクはさっそく、橋の下に潜り込んで地面を掘り始めようとしました。
ところが、ここで困ったことが起きました。
その橋は王様の宮殿のすぐそばにあったので、強そうな兵士たちが昼も夜も交代で見張りをしていたのです。イサクが怪しい動きをすれば、すぐに捕まってしまいます。
イサクは、兵士の目を盗んで、こっそりと橋の下に近づこうとしましたが、そのたびに「コラッ、そこで何をしている!」と追い返されてしまいました。
三日間、イサクは橋の周りをウロウロ、ソワソワしていました。それがあまりに怪しかったので、ついに見張りの隊長がイサクを捕まえて尋ねました。
「おい、お前。さっきから何をニヤニヤしたり、地面をのぞいたりしているんだ。正直に言わないと、牢屋(ろうや)に入れるぞ!」
イサクは震え上がりました。
「ひえぇ、お助けください! 実は、私は正直者です。隠さずにお話しします」
イサクは、自分が見た不思議な夢のこと、そして橋の下に宝物が埋まっているという話をすべて打ち明けました。
話を聞いた隊長は、お腹を抱えて大笑いし始めました。
「ハッハッハ! 宝物だって? おい、お前。そんな夢の話を信じて、わざわざ遠い村から歩いてきたのか? 呆れたもんだな!」
隊長は涙を拭きながら、笑い転げてこう続けました。
「いいか、よく聞けよ。もし俺が『夢』なんてものを信じていたら、今頃俺だって旅をしているところさ。実は俺だって、何日も前から不思議な夢を見ているんだ。
夢の中の声が言うのさ。『〇〇村(イサクの村の名前)のイサクという男の家に行け。そのキッチンの、オーブンの下の床を掘れ。そこには山のような金貨が埋まっているぞ』ってな!」
隊長は鼻を鳴らして言いました。
「でも俺は、そんなバカげたことはしない。この世に『イサク』なんて名前の男はごまんといるし、どこの誰だか分からない奴のキッチンを掘りに行くなんて、時間の無駄だからな。お前も、そんな夢は忘れて、さっさと自分の家に帰りな!」
隊長に追い返されたイサクは、しばらく呆然(ぼうぜん)としていました。
しかし、次の瞬間、イサクの顔がパッと明るくなりました。
「……ありがとう、隊長さん! あなたは世界一の知恵者だ!」
イサクはそう叫ぶと、お礼を言う暇もなく、飛ぶような速さで自分の村へと走り出しました。
来た時よりもずっと速いスピードで(何しろ、帰りの道では一度も靴に話しかける必要がありませんでした!)、イサクは自分の家にたどり着きました。
「ただいま! お父さんが帰ったぞ!」
イサクは家族の驚く顔を横目に、一直線にキッチンへ向かいました。そして、オーブンの下の古びた床板を、力いっぱい引き剥がしました。
すると、どうでしょう!
そこには、本当に、古い革袋にいっぱいに入った「黄金の金貨」が、ザクザクと埋まっていたのです。隊長が夢で見た通り、宝物は最初から、イサク自身の家のキッチンの下に隠されていたのでした。
イサクは、その金貨を使って家族を幸せにし、残ったお金で村のために大きな学校を作りました。
イサクは、いつもニコニコしながら人々にこうお話ししました。
「私は宝物を探しに、わざわざ王様の街まで行きました。でも、そこで分かったのは、宝物は遠い橋の下にあったのではなく、毎日私がパンを焼いていたキッチンの下にあった、ということだったのです」
「それなら、最初から旅なんて行かなければ良かったのに」と言う人もいました。でも、イサクは首を振ってこう答えるのです。
「いいえ。もし私が旅に出なければ、あの隊長さんに会うことはありませんでした。そして、隊長さんに会わなければ、自分の家の床下に宝物があることに、私は一生気づかないままだったでしょう。私は、自分の家の宝物を見つけるために、遠くへ行く必要があったのですよ」
このお話は、私たちに「本当の幸せ」について教えてくれます。
「もっとあのおもちゃがあれば」「もっとあの子みたいになれたら」と、私たちはいつも自分にないものを遠くに探しがちです。
でも、イサクのように勇気を出して動いてみれば、案外、あなたが今持っているものや、あなたのすぐ足元に、世界を輝かせる宝物が隠れていることに気づけるはずです。
幸せへの地図は、案外、今のあなたの部屋の中に、もう書き込まれているのかもしれませんね。
1) イサクが遠い街まで行ったのは、無駄なことだったと思う? それとも良かったと思う?
2) 隊長さんは自分の夢を信じなかったけれど、イサクはどうして信じたのかな?
3) あなたの家や、あなた自身の中に、まだ気づいていない「宝物」があるとしたら、それはどんなものだと思う?



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