・親切の形は一つではないこと
・相手の気持ちを考えて行動することの大切さ
・見えないところで誰かを助ける優しさ
むかしむかし、ある町に、とてもお金持ちの商人がいました。名前はゴウゾウ。ゴウゾウは、町の人々に「優しいゴウゾウさん」と呼ばれたいと思っていました。だから、貧しい人がいれば、いつも人前で大声で声をかけ、たくさんの食べ物やお金を渡していました。
「ほら、困っているのかい?私が助けてやろう!遠慮はいらないぞ!」
ゴウゾウがそうすると、周りの人は「さすがゴウゾウさんだ!なんて親切なんだ!」と褒め称えました。ゴウゾウは、褒められるのが大好きでした。
しかし、町にはもう一人、とても親切な人がいました。名前はタケル。タケルは、ゴウゾウのように有名ではありませんでしたが、人知れず困っている人を助けていました。
タケルが助けているのは、とある貧しい家族でした。その家族には、病気で働けないお父さんと、幼い子どもたちがいました。タケルは、毎晩、家族が寝静まった頃に、そっと彼らの家の戸口に食べ物や薬を置いていきました。
ある時、ゴウゾウはタケルのことを耳にしました。
「タケルという男も、貧しい人を助けているらしい。だが、私のように人前で施しをしないから、誰も彼の親切を知らないだろう。」
ゴウゾウは、タケルのやり方が気に入らず、自分の親切の方が本当の親切だと証明したくなりました。
そこでゴウゾウは、タケルが助けている貧しい家族の元へ行き、また大声で言いました。
「おや、困っているのかい?タケルなどという男の助けを待つ必要はない!私がもっとたくさん、助けてやろう!」
そして、ゴウゾウは、その家族に大量の食べ物やお金を渡しました。家族は、突然のことで戸惑いながらも、感謝の言葉を述べました。
ゴウゾウは得意げに言いました。
「これで、もうタケルの助けなどいらないだろう!私の親切こそが、一番なのだ!」
しかし、その夜、タケルがいつものように食べ物を届けに行くと、家族は戸惑った顔で言いました。
「タケルさん、ありがとうございます。でも、今日はゴウゾウさんがたくさんのものをくださいました。もう、これ以上はもったいないので…。」
タケルは、家族の言葉を聞いて、何も言わずに静かに立ち去りました。
ゴウゾウは、タケルが助けを止めたことを知り、さらに得意になりました。
「見たことか!私の親切が、一番役に立ったのだ!」
ところが、数週間後、その貧しい家族の様子がおかしくなりました。
もらったお金や食べ物はたくさんあったはずなのに、家族の顔には以前よりも元気がないように見えました。
ゴウゾウは不思議に思って、家族の元へ行きました。
「どうしたんだい?私がたくさん助けてやったのに、なぜ元気がないのだ?」
お父さんは、俯きながら言いました。
「ゴウゾウさん、本当に感謝しています。でも…あまりにもたくさんのものをいただいたので、近所の人たちに『贅沢だ』と噂され、子どもたちは学校でいじめられるようになりました。」
「それに、ゴウゾウさんが施しをくださるたびに、大声でみんなに知らされるので、私たちはまるで『見世物』のようだと感じるようになって…」
お父さんは、途切れ途切れに話しました。
「タケルさんは、私たちが困っていることを誰にも知られずに、そっと助けてくれていました。それが、私たちには、どんなものよりも温かい気持ちでした。」
ゴウゾウは、その言葉を聞いてハッとしました。自分は、人から褒められたい一心で親切をしていただけだったのかもしれない。相手の気持ちを全く考えていなかったと気づいたのです。
ゴウゾウは、恥ずかしさと後悔の気持ちでいっぱいになりました。
その夜、ゴウゾウはタケルの元を訪ねました。
「タケルさん、私は間違っていました。本当の親切とは、何なのか、教えていただけませんか?」
タケルは、ゴウゾウの話を静かに聞いてから、言いました。
「ゴウゾウさん、親切とは、相手の心に寄り添い、相手が本当に求めている助け方をすることです。たとえ誰にも知られなくても、相手が傷つかずに済むなら、それが一番の親切なのです。」
ゴウゾウは、タケルの言葉に深くうなずきました。
それからというもの、ゴウゾウは人前で施しをすることをやめました。そして、タケルを見習って、困っている人がいれば、そっと、誰にも気づかれないように助けるようになりました。
すると、以前よりも、人々の心からの感謝が伝わってくるのを感じました。ゴウゾウは、本当の親切が、見栄のためではなく、相手のためにあることを知ったのです。
1) ゴウゾウさんとタケルさんの親切は、どこが違っていたかな?
2) 貧しい家族は、なぜゴウゾウさんの親切で元気が出なかったんだと思う?
3) あなたが誰かに親切をするなら、どんな風にしたい?それはなぜ?



コメント