・見かけの公平さが、必ずしも本当の公平さではないことがある
・相手の状況や気持ちを思いやることが、真の優しさにつながる
・表面的なことだけでなく、物事の本質を見抜く知恵
むかしむかし、ある村に二人の兄弟がいました。兄はハルト、弟はコウタ。二人は両親から同じ土地と財産を分け与えられ、それぞれ自分の畑を耕し、豊かに暮らしていました。
ハルトはいつも言っていました。
「公平が一番だ。何もかも、半分ずつ、きっちりと分けるのが正しい。」
コウタも、その言葉に納得していました。
ある年のこと、二人の畑は大豊作に恵まれました。たくさんの小麦が実り、二人は収穫した小麦をそれぞれ自分の倉に運びました。夜になって、ハルトは自分の倉で、山になった小麦を見ていました。
(ああ、こんなにたくさんの小麦が収穫できた。これで冬も安心だ。)
ハルトは満足しましたが、ふと、あることを思いつきました。
(そうだ。コウタは結婚して、もうすぐ子どもが生まれる。家族が増えるのだから、私よりももっとたくさんの小麦が必要になるだろう。私にはまだ家族がいないから、今のところはこれだけで十分だ。)
そう考えると、ハルトは静かに自分の倉から小麦の袋をいくつか持ち出し、こっそりコウタの倉へと運んでいきました。そして、コウタに気づかれないように、そっと彼の小麦の山に加えていきました。
その頃、コウタもまた、自分の倉で山になった小麦を見ていました。
(ああ、こんなにたくさんの小麦が収穫できた。これで冬も安心だ。)
コウタも満足しましたが、ふと、あることを思いつきました。
(そうだ。ハルト兄さんは、まだ一人だ。結婚もしていないから、私のように家族の喜びも知らない。畑仕事も一人で頑張っている。私には家族がいるから、寂しさを感じることは少ないけれど、兄さんはきっと寂しいだろう。)
そう考えると、コウタは静かに自分の倉から小麦の袋をいくつか持ち出し、こっそりハルトの倉へと運んでいきました。そして、ハルトに気づかれないように、そっと彼の小麦の山に加えていきました。
毎晩、同じことが繰り返されました。ハルトはコウタのために、コウタはハルトのために、それぞれ自分の倉から小麦を運び続けました。
ところが、不思議なことに、どちらの倉の小麦の山も、一向に減ることがありませんでした。
「おかしいな…いくらコウタの倉に運んでも、私の小麦が減らないぞ?」とハルトは首をかしげました。
「変だな…いくら兄さんの倉に運んでも、私の小麦が減らないぞ?」とコウタも不思議に思いました。
ある夜、いつものように自分の倉から小麦の袋を抱えたハルトが、コウタの倉へと向かっていました。同じ頃、コウタも自分の倉から小麦の袋を抱え、ハルトの倉へと向かっていました。
月の光が明るく照らす中、二人は倉の間の道で、バッタリと出会ってしまいました。
「兄さん!」「コウタ!」
二人はお互いが小麦の袋を抱えているのを見て、一瞬、何が起こったのか理解できませんでした。そして、ハルトが先に、ニヤリと笑いました。
「まさか、お前も同じことをしていたのか!」
コウタも顔を赤らめながら笑いました。
「兄さんもですか!」
二人はその場で、大笑いしました。お互いを思いやる心が、同じ行動へと導いていたのです。
「コウタ、お前は家族が増えるのだから、もっと必要だろうと思ったんだ。」とハルトが言いました。
「兄さん、兄さんは一人で頑張っているから、少しでも助けになりたかったんです。」とコウタが答えました。
二人は、公平に半分ずつ分けることだけが、正しいわけではないと学びました。本当の分け前とは、相手の状況を思いやり、心から与え合うこと。そうすれば、誰もが本当に満たされるのだと。
それからというもの、ハルトとコウタは、お互いのことをもっと深く考え、助け合いながら、村で一番仲の良い兄弟として暮らしていきました。彼らの畑は、いつも豊かに実り、その心もまた、いつまでも満たされていたのです。
1) ハルト兄さんとコウタ弟は、それぞれどんな理由で相手に小麦を運んだのかな?
2) なぜ、二人とも自分の小麦が減らないことに気づかなかったんだろう?
3) あなたが誰かに何かを分けてあげるとしたら、どんな気持ちで分けたい?



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