金の冠をかぶった雀

金の冠をかぶった雀 知恵と機転
金の冠をかぶった雀
【今日のお話のポイント】
「ほしい!」と思ったものが、ほんとうに自分を幸せにするとは限らない。
目立つことより、大切なもの(安心・仲間・自由)を守る知恵を持とう。

※このお話は「ユダヤの知恵話(タルムードに由来すると語られる再話)」として伝わる内容を、子ども向けにやさしく語り直したものです。

むかしむかし、広い石畳の町を見おろすお城に、やさしい王さまが住んでいました。
王さまは、町の人だけでなく、庭に来る小鳥たちのことも大切にしていました。

ある朝、王さまが庭を散歩していると、チュンチュンとにぎやかな声が聞こえました。
垣根の上に、雀たちがずらりと並んでいます。

「おや、今日はずいぶん元気だね」

王さまが声をかけると、いちばん前の若い雀が、胸を張って言いました。
「王さま! ぼくらにも、王さまみたいに“王さまのしるし”がほしいです!」

「王さまのしるし?」
王さまが首をかしげると、雀たちは目をきらきらさせました。

「そう! きらきら光る冠(かんむり)です! 金の冠があれば、ぼくらも立派に見えるでしょ?」

周りの雀たちも、いっせいにうなずきます。
「ほしい!」「ほしい!」「金の冠!」

王さまは困った顔をしました。
雀たちはすでに、ふわふわの羽と小さな体で、とても可愛らしいのです。
でも、王さまは怒りませんでした。かわりに静かにたずねました。

「冠をかぶったら、何が変わると思う?」

若い雀は、すぐ答えました。
「みんながぼくらを見て、すごい!って思います。だれも、ぼくらをバカにしません!」

その言葉を聞いて、王さまは少しだけ、さみしそうな目をしました。
けれど、雀たちの願いを簡単に踏みにじりたくありません。

「わかった。いちどだけ、やってみよう」

王さまは職人を呼び、小さくて軽い金の冠を、雀の数だけ作らせました。
次の日、雀たちは頭にちょこんと冠をのせて、庭へ舞い降りました。

キラッ。キラッ。
朝日を受けた冠が光るたび、雀たちはうれしくなって、いっそう大きな声で鳴きました。

「見て見て! ぼくら、王さまみたいだ!」
「いままでより、えらい気分!」

雀たちは、いつもなら木の葉の陰に隠れて食べていたパンくずを、わざと広い道の真ん中でついばみました。
高い塀の上にも、目立つようにずらりと並びます。

ところが――。

それを見ていたのは、町の人だけではありませんでした。
空の高いところで、鋭い目をしたタカが、ぐるりと輪を描いていました。

「ん? あれは何だ。光るものが動いている」

キラキラは、とても目につきます。
タカは「ここに獲物がいるぞ」と教えられたような気持ちになり、すーっと近づいてきました。

その日から、雀たちの毎日は少しずつ変わりました。
いつもより外がこわい。
空を飛んでいても、どこか見られている気がする。
木の陰に隠れようとしても、冠が光って居場所がわかってしまう。

それでも、若い雀は言いました。
「大丈夫! だって、冠はかっこいいんだ!」

ところが数日後――町のはずれで遊んでいた雀の仲間が、タカに狙われてしまいました。
すんでのところで逃げましたが、仲間は震えていました。

「もう、こわいよ……。冠が光るたび、心臓がドキッてする」
「前のほうがよかった。ふつうの雀でよかった」

しかし若い雀は、まだ首を横に振りました。
「弱虫だよ。目立つって、すごいことなんだ」

そのとき、ずっと黙っていた年老いた雀が、ゆっくり口を開きました。
羽の色は少し薄く、声は小さいけれど、目はとても落ち着いています。

「目立つのは、強さじゃない。目立つのは、ただの“しるし”だ」
「しるし?」
「そう。しるしは、遠くの誰かを呼んでしまう。いい人も、こわい相手もね」

年老いた雀は、冠を見上げました。
「冠がくれたのは、えらさじゃない。注目だ」
「注目をあつめすぎると、安心が減ってしまうことがある」

雀たちは、しん…となりました。
風の音が聞こえます。遠くでタカが鳴きました。

その夜、雀たちは木の上で話し合いました。
はじめは「でもかっこいいし!」と言っていた若い雀も、仲間の震える体を見て、だんだん声が小さくなります。

年老いた雀が、最後に言いました。
「本当に守りたいのは何だい?」
「金の冠?」
「それとも、仲間といっしょに、自由に飛べる毎日?」

雀たちは、やっと気づきました。
冠は“ほしいもの”だったけれど、
安心や仲間は“なくしたくないもの”だったのです。

次の朝、雀たちは冠を外し、小さな布に包んで王さまの庭へ運びました。
若い雀が前に出て、頭を下げました。

「王さま……ごめんなさい。冠は、もういりません」
「ぼくら、かっこよく見えたかった。でも……こわかった」
「ぼくらは、目立つより、安心して飛びたいです」

王さまは、しばらく雀たちを見つめました。
そして、やさしく笑いました。

「返しに来られたことが、もう立派だよ」
「本当の冠は、頭の上じゃない」
王さまは、空を指しました。
「自分で考えて選んだ、その心にある」

その日から雀たちは、また木の陰でパンくずをついばみ、夕方には仲間と肩を寄せ合って眠りました。
光る冠はなくなったけれど、かわりに戻ってきたものがありました。

それは、
“安心して息ができる毎日”と、
“仲間と笑える時間”でした。

若い雀は、ときどき年老いた雀に言います。
「ねえ、あのとき止めてくれてありがとう」
年老いた雀は、目を細めて答えます。
「いいんだよ。ほしいものを知るのも、知恵。手放すのも、知恵さ」

💭 いっしょに考えてみよう
1) 雀たちは、どうして金の冠が「ほしい!」と思ったのかな?
2) 冠をつけて、良かったこと・こわくなったことは何だった?
3) あなたが「目立ちたい!」と思うとき、ほんとうは何を求めていると思う?

コメント

タイトルとURLをコピーしました