正直なアベル

正直なアベル 学びと対話
【今日のお話のポイント】
・人は誰でも間違いをすることがある
・間違いを素直に認めることは、とても勇気がいること
・正直に話すことで、信頼は深まり、正しい解決策が見つかる

むかしむかし、ある町のパン屋で働く少年がいました。名前はアベル。アベルは、毎朝早くからパンを焼く手伝いをし、焼き立てのパンの香りに包まれて一日を過ごしていました。

ある日のこと、パン屋のおじさんが、アベルに大事なお金を預けました。

「アベル、このお金で市場へ行って、一番新鮮な小麦粉を仕入れてきておくれ。」

アベルは胸を張って言いました。
「はい、おじさん!任せてください!」

大事なお金を布の袋に入れ、アベルは市場へと急ぎました。市場はたくさんの人で賑わっていて、様々な品物の声が飛び交っています。

アベルは小麦粉を探し回り、やがて、今まで見たこともないほど白くて、きらきらと輝くような小麦粉を見つけました。

「これはきっと、最高のパンが焼けるぞ!」

アベルは嬉しくなって、すぐにその小麦粉を買いました。しかし、お店の人がおつりを渡すとき、アベルは少し変なことに気づきました。

(あれ? 計算が合わないような…)

だけど、お店の人はとても忙しそうで、アベルも早くパン屋に戻らなければと思っていました。それに、もし間違っていたとしても、自分が正しいと主張するのは少し怖い気がしました。

(まあ、いいか。たぶん僕の勘違いだろう。)

アベルは、疑問を感じながらも、そのままパン屋へと戻りました。

パン屋のおじさんは、アベルが買ってきた小麦粉を見て、すぐに素晴らしい品質だと褒めてくれました。
「よくやった、アベル!これなら最高のパンが焼けるぞ!」

アベルは褒められて嬉しかったのですが、心の中には、おつりのことが引っかかっていました。ずっとモヤモヤした気持ちを抱えたまま、アベルは仕事を続けました。

その日の夜、アベルは家に帰り、その日のことを大好きな祖父に話しました。

「ねえ、おじいちゃん。今日、市場でおつりの計算が合わない気がしたんだけど、そのままにしてきちゃったんだ。」

おじいさんは、アベルの話を静かに聞いてから、優しく言いました。

「アベル、人は誰でも間違いをすることがある。だけど、大切なのは、その間違いに気づいたときに、どうするかじゃ。」

「おじいさんは、アベルが正直に話してくれて、とても嬉しいよ。でも、もし本当に計算が間違っていたとしたら、どうすれば良かったと思う?」

アベルは考えました。
「えっと…その場でお店の人に聞けばよかったのかな?」

「その通りじゃ。そして、もし間違っていなかったとしても、自分の心に残るモヤモヤは、そのままにしてはいけない。それは、正直になれなかった自分の心への問いかけだからじゃ。」

おじいさんは続けました。
「たとえ自分が間違っていたとしても、正直に話す勇気があれば、周りの人はアベルを信じてくれる。そして、一緒に正しい道を見つける手助けをしてくれるだろう。それは、どんな美味しいパンよりも大切なことじゃよ。」

次の日の朝、アベルは意を決して、パン屋のおじさんに正直に話しました。

「おじさん、昨日、市場でおつりのことで気になったことがあるんです。」

アベルは、計算が合わなかったかもしれないと思ったこと、そして、その場で言えなかったことを全て話しました。

おじさんはアベルの話を最後まで聞き、少し考えてから言いました。
「そうか、よく話してくれたね、アベル。正直に話すのは勇気がいることだ。ありがとう。」

おじさんは、アベルが持ってきたお金の記録と、市場の領収書を照らし合わせました。すると、やはりおつりが少しだけ足りなかったことが分かりました。

おじさんは、アベルと一緒に市場へ行き、お店の人に事情を話しました。お店の人は快く謝罪し、足りなかったおつりを返してくれました。

パン屋に戻ると、おじさんはアベルの肩をポンと叩きました。

「アベル、今回は小さな間違いだったかもしれない。だが、正直に話してくれたおかげで、正しいことが分かった。そして、おまえの正直さが、私とおまえの信頼をもっと強くしたんだ。」

アベルは、心が軽くなるのを感じました。正直に話すことは、最初は怖かったけれど、そのおかげで、心のもやもやが消え、おじさんとの絆も深まったのです。

その日焼かれたパンは、いつにも増して、美味しく感じられました。アベルは、正直な心こそが、最高の材料だと知ったのです。

子どもへの問いかけ(いっしょに考えてみよう)
1) アベルは、なぜ最初、おつりのことをそのままにしてしまったんだろう?
2) もしアベルが、ずっとおじさんに話さなかったら、どうなっていたと思う?
3) あなたがもし間違いをしてしまったら、どうやって正直に話す勇気を出せるかな?

コメント

タイトルとURLをコピーしました